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CONCEPT
これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている。社会のために何かするってそんなに特別なことじゃない。働いてても、学生でも、主婦でも日常の中でちょっとした貢献ってできるはず。これからはそんな生き方がかっこいい。r-libではそんなライフスタイルの参考になるようなロールモデルをレポーターたちが紹介していきます。
# 023
YU NAKAMURA
March 10, 2015

r-lib | 堀江 美希 × 中村 優 「関係性のレシピ」で笑顔をシェアし、しわを生み出す

GENRESArrow文化

「関係性のレシピ」で笑顔をシェアし、しわを生み出す

おばあちゃんの知恵が詰まったレシピを、娘さんが継承しているとは限らない。当たり前すぎて書き残していないことも多いとか。何も無かった時代を切り抜けてきたおばあちゃんたちだからこそ持っている知恵の価値は計り知れない。

Reported by Miki Horie


— 誰か尊敬している人っているんですか?

 最初はインタビューしていた社会起業家の方達の様に生きたいなとか、そういう生き方も素敵だなと思ってたんですけど、やっぱりインタビューをして行く中で、その社会問題を自分ごとにしてやっている人ばかりだし、「この問題は自分が解決しなきゃいけない」と思うような、なにかすごい痛烈な体験がみんなにあるんですよね。けれど、私にはそれが無くって。でもやっぱり新興国とかに行った時にとっても笑顔が素敵だったから、そういう笑顔が生み出せるような仕事はしたいな、とは思いました。そのツールがたまたま料理だって思ったのがきっかけだったかもしれないです。


— 3年、5年先には優先生と同じような生き方の人も増えてくるかもしれないですね。

 どうですかね。もっと自由にやったら良いのに。とは思いますけどね。なかなか死なないし。


— それってなんか究極ですね。なにかあったんですか?

 仕事ですごく出張が多くなって、いろんな所に行くようになりました。どうせこんなに家にいないんだったら家いらなくない?と思って、2泊3日とかで使う小さいキャリーバッグ1個で1年半過ごしました。そのホームレス生活をしてるときに、家が無くても大丈夫だと思いました。都会なら東京もパリもマドリードも、仕事の作り方ってだいたい一緒だし、もし田舎に行ったら行ったでなにか育てて食べて行くことは出来るし、まあ死なないだろうなって思って。それを考えると、一人生きる分には自分の好きなことをやったら良いと思えるようになりました。




「料理は笑顔をシェアするためのツール」



— すごいワイルドですね・・・優さんにとって料理とはなんですか?

 料理は笑顔をシェアするためのツールです。音楽とかスポーツの才能があったらやっていたと思うけど、言語を越えて笑顔になれそうなことの中で私に出来そうなものが料理でした。


— では、優さんにとってレシピの伝承とは?

 「おばあちゃんのレシピ集めてます」って言うと、すごくほっこりしたイメージがあると思うんですけど、話を聞いているとほっこりというよりも超ロックで面白いんです。それに何も無いところから作ってきた時代の人達だからとってもクリエイティブ。例えば雑草のドクダミ1つとっても、乾燥させてお茶にして、焼酎につけ込んで化粧水にしたり、そのまま発酵させてワインにしている人がいたり。こういった工夫をしてても、おばあちゃん達は別にたいしたことないと思ってるんですね。だからなかなか自分でそれを書き残すことはなくて、娘さん達もそれがあまり大事なことだとは思ってないから引き継いでいなかったりする。それがすごくもったいないなと思って。そういう美味しさの秘訣や関係を築いてきたレシピは、土地との関係性であったり、自分が作ってあげる人との関係性でしか成り立っていないと思います。そして、その関係性が詰まっている人がおばあちゃん。そういうtipsを受け継ぎながらもどんどん進化させていきたいなと思っています。


— 受け継ぐ上で大事にしているスタンスはありますか?

 例えば、おばあちゃんに会いにいって「レシピ聞いてます」って言うと、ハレの日のレシピを教えてくれようとします。ちらし寿司だったり、刺身盛りだったり。昔、彼女達の時代にはごちそうで喜ぶだろうと思うものを出してくれるんだけど、やっぱりケの日のレシピというか普段食べてきているものの中に知恵が詰まっていると思うんですね。そこがその土地柄も表れてすごく面白い所だと思うんです。でもそれを教えてもらうには、心を開いてくれないと教えてくれないから、会ったその日には聞きません。だいたい確信犯的にそのおばあちゃん家に泊まって仲良くなった2日目以降だったり、2回は会いにいったりしてますね。初日は私が作ることも多いです。その土地のものを使って、ちょっとスペイン風にアレンジして出すと喜んでもらえます。そして話している中で、私が「それ超面白いな〜!!」とか言いだすと、教えてくれます(笑)。


— 編集の仕事と一緒ですね。いきなりこっちで決めつけるのではなくて。どうやって聞き出すかというのは。

 その人のストーリーと、その人と誰かの関係性を聞いてその中で自然体な部分を引き出していきます。おばあちゃん達の時代って好きで結婚した人なんてあんまりいなくて、お見合いもそうだし、お姉ちゃんの旦那さんでお姉ちゃんが死んじゃったから自分がお嫁に行くとか、結構いっぱいあって。それでもずっと一緒に居続けるってすごいことだと思うんです。そのtipsがレシピになるんじゃないかなって。

自分に嘘をつかない生き方をして、いいしわのおばあちゃんになりたい


— 優さんみたいに生きたくても、ちょっと勇気がでなくて一歩踏み出せないという人へのメッセージやアドバイスはありますか?

 自分にとって何が一番大切なのかを考えていますね。あとは匂いが重要だと思ってるので、いい匂いのする人達と一緒にいたり、いい匂いのする方向に行くというふうに決めています。自分の感情に嘘をつかないことって大切じゃないですか。どんなところにいても人のせいにしたくないから、そのためには自分で責任持って決めないといけないし、何か起こった時に自分で選んでないと不幸に感じると思うんです。フリーランスで活動していたけれど、自分1人でやったことなんてひとつもなくて、基本的には常にまわりに人がいて、助けられていつも生きています。ホントに大事な物とかホントに自分に嘘をついてないかとか、それを考えて生きたいなという感じです。
 インタビューしていたときも、やっぱり私が素敵だなと思う人たちってそうだったんです。自然体というか、自分に嘘をつかずに生きている人達。
 私「しわフェチ」なんですよ。特に目尻が好き。しわ見てると、人って歳とれば歳とるほど、顔に性格がでるなってすごく思うんですよ。こういう風に笑ってきたんだろうなとか。だからそういうおばあちゃんの目尻のしわとか見ていつも超萌えてます。でもそうやって顔に出てしまうから、ちゃんと自分に嘘をつかない生き方をして、いいしわのおばあちゃんになりたいなと思いますし、そんな人がこれから増えていくようなプロジェクトを仕掛けていきたいなと思っています。

— なんだか今日のお料理の味と同じような優先生の優しさを感じました。これからも先生のご活躍を楽しみにしています!!今日はありがとうございました!!



































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中村 優

中村 優YU NAKAMURA

PROFILE

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世界中で「料理するから泊めて」と言いながら家庭をまわり、家庭料理も学ぶ。
その後は自分の訪れた国の家庭料理を振る舞うケータリング、「優の旅人キッチン」を主催。
今までにまわった国は約30カ国、英語とスペイン語を話す。
編集と料理の弟子入り期間を経て、世界のいたるところに溢れている本当においしいものを探し出し、誰がどんな場所で、どんな思いを持って作ったのかを描いたストーリーブックとともにお届けするプロジェクト『YOU BOX』を実験的にスタート。
最近は、世界中のおばあちゃんのレシピを集めてまわっている。

by 堀江 美希
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