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これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている。社会のために何かするってそんなに特別なことじゃない。働いてても、学生でも、主婦でも日常の中でちょっとした貢献ってできるはず。これからはそんな生き方がかっこいい。r-libではそんなライフスタイルの参考になるようなロールモデルをレポーターたちが紹介していきます。
# 028
NOBUYA MIYATA
July 15, 2015

r-lib | 早川 愛 × 宮田 宣也 日本の神様の正体がわかった気がした

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日本の神様の正体がわかった気がした

日本全国の多くのお祭りに触れる中で、日本人がいかに自然を崇拝し共存してきたかを痛感することになった宮田さん。海外に御神輿を持っていく際に、日本の神様や神道に真剣に向き合ったといいます。そんな中相談した神主さんに言われた一言がまさに目から鱗だったとか。さて、神主さんは宮田さんになんとアドバイスしたのでしょうか。

Reported by Megumi Hayakawa






— なんか御神輿担いでみたくなりました(笑)。

 いいですね(笑)。今度一緒に担いでみましょう。ところで神様の正体ってなんだと思います?




御神輿をあげる前に祝詞をあげて神様にご挨拶


— 雲の上でみんなを見守ってくれてる、みたいな感じですか? 唐突すぎて難しい質問です(笑)。

 僕、最近わかったような気がして。神様ってなんだろうってずっと考えてたんですよ。これもご縁なんですが、フランスやタイなど海外に御神輿を持って行って担ぐという機会に恵まれまして、その時に凄く悩んだんです。御神輿というのは神社で御霊(みたま)を入れてから担ぐんですけど、その御霊をどこで入れたらいいのかという問題があって。向こうにも一応神社があるので、そこの神社の御霊を入れるべきなのか、こっちの神社で入れるべきなのか。神道や神社などいろんな文脈がある中で、理解したフリだけして持っていくことはできないなと思って悩んでいたんです。
 そこで福岡にある宗像大社の権宮司(神社で最高位の宮司に次ぐ役職)さんに相談したんです。そこは天照大御神を最高神とする古事記が形作られたもっと前の時代、磐座(いわくら)神籬(ひもろぎ)の信仰の時代からあったと言われている神社なんですね。磐座は岩に、神籬は木に神様が宿っているという考えです。岩が神様、山が神様、木が神様というアニミズムの時代から「この木には神様がいる」と何千年も大事にされてできた神社なんです。



日本人にとって神様と自然は一体

僕がやろうとしてたことは全く逆のことだった


 それでそこの権宮司さんに悩みを打ち明けたら、そんなに真面目に考えなくてもいいですよって言われたんですよ。神様がいるから、立派な御神輿だからっていうだけで大事にされたり人が集まるわけじゃないって。例えばそこら辺にある棒一本でも、それがみんなに楽しく担がれて何十年もしたら、それをみんなが神様って言ってくれるんだよって。それでハッとして。僕がやろうとしてたことは全く逆のことだったんです。宗像大社も最初に立派な社(やしろ)を建てたから人が来たんじゃなくて、最初はただの一本の木だったわけです。でもその木がなんか良いからと行ってみると、癒されるしパワーをもらったりするから人が通うようになって、大事な木だからっていつしかそこに柵ができて、人が通うからいろんなものが建ち始めたんです。そうやって人の気持ちが集まってきたから、最終的に大きな社が建ったってことなんだと。




杭一本立てて本当に人の気持ちが集まってくれば、

いつしか必ず神社が建つ


 その権宮司さんは被災地で神社が流されたりした時も、たくさん相談されたらしいんですよ。神社って建てるのに数億円かかるし、御神体(神様が宿っている鏡や剣など)も流されちゃってどうしたらいいんだって。でもその時も、杭を一本立てておけばいいって助言したらしいんですよ。つまり、そこに杭一本立てて本当に人の気持ちが集まってくれば、いつしか必ず神社が建つから立てておけって。確かにそうじゃないですか。杭が立てばそこに人の気持ちが集まるシンボルになるわけで、それがあればいつか神社が建つと思うし、そこにいつか神様が宿ると思うんですよ。だからそれが日本の神様の正体じゃないかなって。


— 神様の正体が!!!人の気持ちってことですか?

 人の気持ちが集まる場所だったってことですね。


— (スタッフ一同)おぉぉ〜!!

 被災地で僕が御神輿を担がせてもらってる雄勝もそうですけど、そこの白銀崎っていう岬も凄くいい場所なんですよ。そこでも人の気持ちが集まってきて、みんながそれを大切にして、それで神様が宿る立派な神社になったんじゃないかなって思っています。でも今はみんなもっと便利な都市部に出て行っちゃうし、更に震災もあったので、そもそも人が全然いないんですよ。もちろん仕事とかあるから仕方ないんですけど。



女川の熊野神社が震災後に高台移転することが決まり、この場所でやる最後の御神輿に


 昔は特に自然への感謝って凄くあって、例えば農業をやっていれば、土地がいつも恵みをもたらしてくれると感じるし、漁業なら海が生活させてくれてると感じるわけですよね。なかなか今の経済の中では、土地が食わせてくれてるって感覚が生まれづらいと思うんですけど、自然と共に生きてる人達ってここの場所のおかげで自分たちは生きてる、ここの里が自分たちを守ってきてくれたんだって感覚が生まれるじゃないですか。その感謝の対象となるのが神社だと思うんです。「去年はありがとうございました。今年もよろしくお願いします」ってことなんですよ。一年に一回お祭りがあるのは、大切にしてる何かが御神輿に乗って里に来るってことなんです。それじゃあ、お迎えしましょうっていう文化なんですよ御神輿って。



漁村のお祭りは豊漁や船の安全などを祈願して行われる










— 今日は凄く勉強になりました。最後に、宮田さんにとってお祭りとは?御神輿とはなんですか?

 僕にとってですか。う〜ん。祭りは地域の豊かさの鏡だと思うんですけど。御神輿は、答えはでてないですが、一生かけて答えを見つけていくものかな、僕にとっては。
 一つだけ夢があるんですよ。すごいささやかなんですけど。里で爺さんの作った御神輿が毎年あがってるんですけど、自分の御神輿をいつかその後ろで一基担いで、僕に次の世代を担う子どもができたら一緒に担いで、「おまえも自分で御神輿作れよ」って言うのが夢なんですよ。それができたら今回の人生はオッケーかなって。僕の役割は果たせたかなって思いますね。でもそれって難しいんですよ。今の時代、御神輿作ればいいってもんじゃなくて、里の人達の気持ちも御神輿に対する気持ちももっと理解を深めないといけないし。さらに次の世代にちゃんと御神輿、御神輿屋さんっていうのを繋ぐための土壌もつくっていかないといけないし。日本という規模で色んな文化の底上げをしないと簡単には実現できないと思うんですけど、僕にとってのささやかな夢はそんな感じですね。


— とても素敵な夢じゃないですか!!今度本当に御神輿担いでみたいです!!これからも頑張ってください。今日はありがとうございました!!




宮田さんの従姉妹も小さい頃から御神輿に接していたら何かを受け継いでくれるに違いない













明日襷 ーASHITASUKIー




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宮田 宣也

宮田 宣也NOBUYA MIYATA

PROFILE

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宮田宣也

 神輿の修理,製作をする木工の職人でありながら,地方の祭礼支援や神輿や山車を使った祭の創造に関わる。
 神輿の製作だけでなく、次世代へ祭礼を繋ぐため、主に地方の祭礼との連携を積極的に行う明日襷の活動を行う。茨城県八坂神社,岐阜県手力雄神社,神奈川県大稲荷神社,宮城県白銀神社,山梨県美和神社などの祭礼の支援を行い,さらには宮城県雄勝地域の「鼓舞」「復興商店街記念祭」への山車や神輿での演出を担当し新たな祭の表現方法を探っている。
 2014年9月南フランス,2015年3月タイでの神輿渡御を行い,海外での神輿文化創出にも関わっている。

by 早川 愛
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