ー 本日はお忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いします。今回はUNHCR難民映画祭プロジェクトマネージャーをされている今城さんへの取材なのですが、UNHCRや難民映画祭など、初めて知る方も多いと思いますので、簡単にご説明いただけますか。
はい。まずUNHCRですが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR: United Nations High Commissioner for Refugees)といって難民の保護と支援を行う国連の機関です。難民というのは「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人々と定義されています。加えて、UNHCRにとって支援対象者は難民だけでなく、庇護希望者や帰還民、無国籍者、国境を越えずに避難生活をしている国内避難民の一部も含まれます。創設以来、UNHCRは数千万人以上の生活再建を支援し、1954年と1981年の二度にわたりノーベル平和賞を受賞しています。
そして難民映画祭は今回で9回目を迎える、UNHCR駐日事務所が主催するイベントです。映画・映像を使って難民問題を知ってもらおうという趣旨で行っています。難民についての情報はなかなか社会には伝わらないんですね。この企画が始まった頃はまだSNSもありませんでしたし、UNHCRに限らずあらゆる団体が情報の拡散を模索していた時期だったんです。その中で生まれてきたとてもユニークなアイディアだと思います。メディアの形態がいかに変わろうと、技術がいかに革新しようと、映像は何かを伝えるという意味では非常にベーシックで、かつ、すごく人の頭にも入ってくるし、ハートにも届きますよね。映像の力、映画の力っていうのは、やればやるほど痛感しますね。
UNHCRの難民登録を受ける中央アフリカ共和国の国内避難民の家族
ー 難民映画祭は、もともとある映画をこの映画祭に集めて上映しているんですか?それとも、この映画祭のために作品が作られてそれを上映するんですか?
映画祭のために作られる映画はありません。全部集めてきた映画です。ぜひ難民映画祭にこの作品を選んでくださいと言ってくださる方は結構いらっしゃいます。それが日本の監督さんの場合もあれば、海外の人もいますけれども。
圧倒的に多くの難民を受け入れているのは、発展途上国であることを知ってもらうことも難民映画祭の役目
ー ということは他の国々ではまだあまり無くて、駐日事務所だけが独自に行っているということですか?
はい、そうです。この規模で開催してるのは日本の事務所だけなんですけど、今は香港とか、あとバンコクのUNHCRの事務所も似たような企画をやるようになってますね。
ー ヨーロッパなどでは日本と同じように難民映画祭やっていこうみたいな動きはないんですか?結局、難民問題に直面するのって先進国、特にヨーロッパじゃないですか。
ヨーロッパ、例えばフランス、イタリア、ドイツなどの国ではUNHCRがあえて啓蒙活動しなくても、難民問題は常に意識の中にあるんですね。日常的な問題ですから。隣の家の人が難民っていう社会に益々なりつつあるんです。そういう意味では日本のような国はやる必要があると思います。とはいえ日本国政府はUNHCRに対してかなりの額を拠出しているんですよ。不景気の時でも、3・11の年でも実は日本国政府は予算を下げずにずっと維持してるんですね。UNHCRを通じての難民の支援という事で考えると、日本は国として多大な貢献をしています。ただ、それがあまり知られてはいないですね。それは知られるべきだと思います。皆さんの税金ですから。実は募金以前に皆さん納税者の方々からは、間接的に難民支援をしていただいているわけです。そのことが知られていないのは我々に責任があるので、そこはちゃんと国民の皆さんに対して説明というかアピールはしていかなきゃいけないと思ってますね。また実際のところ、先進国に難民が押し寄せるというイメージが先行しているかもしれませんが、圧倒的に多くの難民を受け入れているのは、発展途上国であることを知ってもらうことも難民映画祭の役目だと思います。